会長挨拶

会長:清水直樹

第38回日本小児救急医学会学術集会

会長清水 直樹

聖マリアンナ医科大学小児科学講座 主任教授

大会長:黒澤寛史

第32回小児集中治療ワークショップ

大会長黒澤 寛史

兵庫県立こども病院小児集中治療科 部長

謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げるとともに、平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
このたび、第38回日本小児救急医学会学術集会と、第32回小児集中治療ワークショップとを合同で開催させていただく運びになりました。会期は2025年7月4日(金)から6日(日)、会場は虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)です。テーマは「小児の救急と集中治療を科学する〜予防から恢復まで〜」といたしました。

小児救急医療と小児集中治療とは、これまで渾然一体と議論されることがしばしばでした。小児救急医療にはゲートウエイとしての巾広い使命があり、小児集中治療には最後の砦としての確固たる役割があります。両者は密接に連関する必要がある一方、決して同じ専門性ではありません。ともに中途半端にならないようにするためにも、それぞれの専門性を見つめるとともに、それぞれの専門性が学問として成熟する過程を相互に高め合うことが必要です。今回、日本小児救急医学会と日本小児集中治療研究会とが学術集会・ワークショップを合同開催できたことは、そうした観点で画期的なことであり、その実現に向けてご賛同ご協力くださった皆様には、心から感謝申し上げます。さらに、救急医学と集中治療医学の両者に関わる蘇生科学を司る日本蘇生協議会のご協力を得て、日本蘇生科学シンポジウムを併催することともなり、2025年の救急蘇生ガイドライン改訂を前に活発な議論が交わされることが期待されます。

救急や新生児医療が在野の臨床から始まり、最終的に医学教育の現場に独立性を持った専門性として認められるまでには長い年月を要し、関係各位のご苦労はひとかたならぬものがあったと想像します。
しかし今や、救急医学や新生児医学について、その特性を理解しないアカデミアの医療従事者は、もはや存在しません。小児救急医療と小児集中治療も、臨床の側面では欧米豪に遅れながらも今世紀に入ってから着実に成長してきました。しかしながら、その学問としての独立性、さらに医学教育における個別認識が確立されているかというと、否です。

小児救急医療は、決して緊急患者や重症患者だけを対象とする学問ではありません。例え非緊急でも軽症でも、保護者にとっては深刻な事態ですから、豊かな想像力をもって保護者の不安を癒すことが必要です。一方で、働き方改革の中でこうした不安に対峙しつつも、より効率的に小児救急医療を実践し、医療資源をいかに適切に再配分するかもこれまで以上に真剣に問われています。

小児集中治療には、周術期管理、院内危機管理、院外三次救急患者管理の3つの柱があり、多様な対応力を求められます。しかし、どのような患者であっても、その治療やケアの基本は同じです。小児急性期医療全体を俯瞰した時、その基本を多くの医療者が身につけることが、小児に適切な医療を提供することにつながります。小児の重症化を予防する。重症化の徴候を早期に認識し、適切に対応する。恢復の過程をみすえた治療やケアを実践する。この一連の流れを整えてこそ、小児とその保護者のための急性期医療体制と言えます。

救急医療と集中治療はシームレスにつながっているのに、医療者がそれを分断しがちです。小児救急・集中治療の連携を礎とした、よりよい小児急性期医療体制を整えるために、私たちに何ができるのか、何をすべきなのか、現場では何を学ぶべきなのか。急性期医療の専門家として、その急性期だけを捉えていては未熟です。発生防止であるPreventionから、発生後のbio-psycho-social integrationすなわちNormalizationを目指さなければなりません。本会を小児救急医療のエキスパートと小児集中治療のエキスパート、そしてそれらを学ぼうとする多くの医療関係者が集い、小児急性期医療の未来を考え、実践を学ぶ機会にしたいと考えております。

こうした臨床面の研鑽はもちろん重要ではありますが、今日救えなかった命を明日には救うためのbreak throughとなるダイナミックな医学研究なくして、将来の発展は見込めません。さらに、将来の臨床と研究を担う医学生に対する医学教育の充実なくして、私たちの未来はありません。小児救急医療と小児集中治療は、先人が築いてきた臨床の実績を礎に、これら分野の研究と医学教育の充実に向けてさらに力を入れてゆく時として、潮が満ちたのです。

集中治療医学の黎明期に、Academic Critical Care Medicineという用語を初めて用いられたのが、平澤博之先生でした。今回の学会では、小児救急医療と小児集中治療がそれぞれアカデミアにおける存在を認められるよう、平澤先生をお招きして教えを請えればと考えています。また、医師であり文学者でもある海堂尊先生をお招きして、サイエンスとアートについてもお話をいただく予定です。さらに、小児蘇生領域のワールドトップリーダーである、Vinay Nadkarni先生に現場で最新のお話をいただけることになったのも嬉しい限りです。

これまでにない今回の学会企画が、小児救急医学・小児集中治療医学・小児蘇生科学のさらなる飛躍につながる議論の場となることを祈念して、挨拶の言葉とさせていただきます。

末筆になりましたが、皆様の益々のご発展をお祈り申し上げます。

謹 白